原爆体験VR:終戦記念日に向けて見てほしい3つの動画「怖い」体験は抑止に繋がる?

原爆体験VR:終戦記念日に向けて見てほしい3つの動画「怖い」体験は抑止に繋がる?


幼少期を問わず語り

とある絵本との出会い

小学1年生か2年生のころだから、いまから39年ほど前だろうか。

親戚の3つほど年上の従兄弟と一緒に、イトーヨーカ堂内の本屋に出かけた際、

「すっげぇ怖えー本あるけど見るか?」



と、見せられたのが「ピカドン」というタイトルの絵本だった。

その絵本には文字がなく、日常生活のなかに爆弾が落とされ、人々が次々ともがき苦しみ、死んでいくさまが描かれていた。

当時、小学生の私には、原子爆弾により焼けただれ、人が溶けていく絵がたいへん恐ろしく、家に帰ってからこの本のことを両親に話した。

「それは、きっとピカドン。原爆のおはなしだね」

ピカドン PICADON

ピカドン PICADON

そして、両親から絵本のなかの出来事が「事実」であることを聞かされ、たいへんな衝撃を受けたのを覚えている。

同時期、私は図書館でH・Gウェルズの「宇宙戦争」を借りて読み、近い将来地球に攻めてくるかもしれない火星人に怖がっているような純朴な少年だ。

「人が人を殺す。それも、こんなむごいやりかたで」

大勢の人間を、害虫駆除の如く一斉に殺していく。自分と同じ人間が、そんなことができる可能性をもっているということに、心から恐怖したことを今でも覚えている。

自分が中学生になるまで、虫を殺せなくなったのも、この経験があったからだろう。

日本の広島と長崎に原爆が落とされたという事実

2018年より73年前の1945年8月6日。

広島市にアメリカ軍による原子爆弾「Little Boy」が投下。

続いて3日後の8月9日に長崎市に原子爆弾「Fat Man」が投下。

爆発時と被災後を含め、これによる死者は延べ24万6千人にのぼる。

人類の歴史のなかでも他に類を見ない集団虐殺のひとつだ。

この惨劇は、世界的にも「二度と起こしてはいけない悲劇」として受け止められている。

とはいえ、核軍縮もままならず、再びこのような大殺戮が起こるやも知れない可能性を、世界は拭い去ることはできていない。

73年めを向かえ立ち上がった若者たち

やがて風化するかもしれない風習

2018年の今年、原爆投下から73年。

特に節目のある年でもないが、例年通りキチンとTVは広島市の慰霊式を報道し、日本国総理大臣である安倍晋三も挨拶を行った。

惨劇を忘れないことが、次の過ちを起こさないためには大事なこと。

この風習が、今後何世紀でも続けば、そして二度とこのような悲劇が起きなければと思う。

しかし、時の流れとは残酷なもので、まだまだ73年、されど73年。被爆者の方達は既に高齢で、生き証人として後世に語り継げられる人々は僅かとなってきた。

風化させてはいけないことが、風化する可能性を帯びていることも、確かな事実である。

高校生「原爆」と正面から向き合う

地元、広島市の「広島県立福山工業高等学校」の生徒たちは、原爆の惨状を多くの人びとに知ってもらおうと、2年以上の月日をかけて「原爆体験VR動画」を作成した。

5分間のVR動画は、1945年8月6日の広島市を舞台に、原爆の投下前と投下後を体験できる。

本安川のほとりを歩き、郵便局を訪れ、志摩病院の中庭に入り込む・・・

突然、世界は真っ白に光り輝き、次の瞬間には青空は暗闇と化し、方々から煙と火の手が上がる惨状に。

学生たちはリアルな街並みをVRの世界に作りこむために、市の歴史写真や絵葉書を参考にしたとのこと。

VRのもつ表現力の強み

「言語がなくても、いったん映像を見ると分かります」

と、このプロジェクトに携わった生徒が語った。

VR映像は、焼け落ちる志摩病院(現在の原爆ドーム)や、自分を包み込む業火が映し出される。

そのとおり、言葉巧みに説明するよりも「体験」してもらうことが、いちばん伝わる。

少なくとも、この映像から原爆被災者の方々が体験した「恐ろしさ」は、言葉の壁を超え、世界中の誰もが感じることが出来るだろう。

3つめの動画はメイド・イン・アメリカ

戦争体験ゲームでの被爆体験

2007年に発売されたTVゲーム「Call of Duty: Modern Warfare」は、当時の世界の軍事バランスや兵器を元に「もし、アメリカとロシア間で戦争が起きたら?」というシナリオをプレイするFPSだ。

その中で、プレイヤーは核弾頭の爆発による被爆体験をする。

ヘリコプターに搭乗していたプレイヤーの目線の先で核弾頭が爆破、爆風がヘリを襲いコントロール不能に。

気絶から目を覚まし、機外に這い出ると目の前には巨大なキノコ雲が天を貫く。

爆心地は数十キロ先であろうに、周囲の建物は崩れ、味方の兵士たちは横たわり動けなくなっている。

やがて自分も動くことができなくなり・・・

このシーンは海外において話題となり「広島や長崎はあのような感じだったのだろうか?」「核兵器の廃絶に賛成」「これは人間の所業じゃない」などの声が多く上がった。

プレイヤーの多くは、この追体験により「核爆弾、原爆の恐怖」を植え付けられたに違いない。

ただ、同時に日本国内からは「こんな生やさしいものじゃない」「人間の傷つきかたがヌルい」「机上の空論を絵にしたようなもの」的な声が多かったことも確かだ。

核兵器抑止として「怖い」は必要?

決定版 広島原爆写真集

絵本「ピカドン」は、短編アニメーション作品「ピカドン」のセル画をもとにした絵本である。

自分より少しお兄さんの世代は、夏になると学校の体育館や近所の公民館で、このアニメを鑑賞したそうだ。

そして、感想はというと、

「キモチワルイ」「こえー」「夜中にトイレに行けなくなる」

被爆者の方達に対して不謹慎かもしれないが、伝わることは「恐怖」で構わないと思う。

なにせ人類は、地球の歴史からみればまだまだ子供、ガキである。

「夜中に口笛をふくとヘビが出るよ!」

悪いことをしないよう躾をするのには怖い思いをさせるのがいちばん。

人間誰だって、殺されてしまうほどの怖い思いはしたくないはずだ。



大事なことは、忘れないこと。

そして、忘れてしまわないようにすること。

核ミサイルの発射スイッチを押す刹那、恐怖の映像がその人間の脳裏に浮かぶことで止まる指先。

その活動を積極的に行い、大きく功績を残した広島県立福山工業高等学校の生徒の方々に、改めて賛辞を呈したい。